不動産の売却をお考えの際、「自分の家はどの位の価格で売れるのだろう」と気になる方も多いでしょう。
インターネット上で、「不動産 売却」などで検索すると一括査定サイトが多く表示されますが、運営会社やアフィリエイト(商品紹介してクリック収入を得るサイト)のサイトが大量の記事を提供していることから、偏った情報も多いです。
一括査定サイトの利用には一定のリスクがあるため、仕組みを理解したうえで適切に利用することが望ましいといえます。
一括査定サイトには、どのようなリスクがあるのでしょうか。
この記事では、「不動産売却一括査定の仕組みとリスク」について解説します。
不動産売却の一括査定サイトとは、無料で複数の不動産会社に査定を依頼できるインターネット上のサービスのことです。
不動産会社を探す手間が省け、査定価格を簡単に比較できるメリットがあります。
一括査定サイトの概念図を表すと、下図の通りです。
一括査定サイトには、サービスを提供しているサイト運営会社(主にIT会社)が存在し、サイト運営会社は登録制で全国の不動産会社を抱えています。
依頼者から売却を依頼されると、サイト運営会社はあらかじめ登録されている不動産会社に対して、査定の依頼を打診します。
不動産会社にとって、売主からの査定依頼は商売のタネであり、貴重な情報です。
本来であれば、査定依頼は不動産会社の営業努力によって発掘していくものですが、サイト運営会社はその営業部分を代行しているという関係になります。
依頼者から情報を受け取る不動産会社は、査定に参加したい場合には一括査定サイトに査定参加料(広告料)を払い、一括査定に参加します。
不動産会社が一括査定サイトに支払う査定参加料は、1回あたり1~2万円程度です。
査定の依頼をする売主は無料で査定を依頼できますが、査定に参加する不動産会社はタダではないということです。
不動産会社は1件の反響を得るために、毎回1~2万円程度の査定参加料を払って査定に挑んできますので、契約を取りたくて必死な状況となっています。
一括査定サイトのリスクについて解説します。
◆必ずしも高く売れるわけではない
まず知っておきたいのは、一括査定サイトを使っても、必ずしも高く売れるわけではないという点です。
査定に参加した不動産会社は、自分たちも複数の会社と競合していることを知っています。
査定参加料を支払っているわけですから、なんとか仲介の媒介契約を受注したいわけです。
そこで、ありがちなのが他社よりも査定価格を高く提示し、媒介契約の受注につなげようとする対応になります。
仲介の査定は、あくまでも不動産会社の考える売却予想価格であり、その価格で必ず売れることを保証するわけではありません。
保証する価格でないのであれば、無責任に査定価格を高く出して媒介契約を受注し、売りに出してから売主に値下げを要求する不動産会社も現れてしまいます。
一括査定サイトでは、不動産会社は査定参加料を払い、かつ、競合の中で受注を獲得しなければならないことから、不動産会社は心理的に焦っています。
そのため、一括査定サイトでは査定結果が高過ぎることも多く、結果的に売却期間は長期化し、不動産会社から値引きを提案されて安く売ることも多いのです。
「査定価格と売却価格はイコールではない」ということをしっかり覚えておきましょう。
◆しつこい営業電話がある
一括査定サイトでよく問題となるのが、しつこい営業電話があるという点です。
不動産会社は査定参加料を払って査定に参加していますので、媒介契約の受注を獲得しようと必死になっています。
当たり前の話しではありますが、不動産会社の営業マンは、契約を成立させて手数料を稼ぐことが仕事です。
そのため不動産会社からすれば、しつこく営業電話をしてでも受注を獲得しようするのは当然の心理です。
一括査定サイトは、一度に6社程度の会社に査定を依頼することも可能です。
仮に6社が2回だけの営業電話をしても、依頼者には12回も電話がかかってくるため、余計にしつこく感じます。
電話は各社がバラバラにかけてきますので、昼夜を問わずかかってきます。
一括査定サイトを利用する場合には、営業電話が各社からかかってくることは覚悟することが必要です。
◆どのような不動産会社に査定が依頼されるかわからない
一括査定サイトは、どのような不動産会社に査定が依頼されるかわからない点もリスクの一つです。
たとえば台東区の不動産を売却するのであれば、台東区に所在する不動産会社に依頼した方が地域の特性などを熟知しています。
しかし、一括査定のサイト上では、他のエリアの不動産会社が表示されるかもしれません。
また、一括査定サイトの中には、登録されている不動産会社を一覧表で表示しているサイトもありますが、実際に査定に訪れる会社はその一覧表のうちの3~6社となります。
一覧表の中に名の知れた大手不動産会社があったとしても、実際に査定する会社は全く知らない不動産会社となることもあります。
本来、査定はその不動産会社の特徴やサービスを知ってから依頼すべきものとなります。
例えば、仲介による売却だけでなく賃貸も検討してみたい場合には、あらかじめ賃貸管理も行っている不動産会社を調べたうえで、その会社に査定を依頼すべきです。
どんな会社に個人情報が流れてしまうかわからないという点も、売主にとっては非常にリスクがあり、不安な部分だと思います。
◆希望の内容が査定できるとは限らない
一括査定サイトを利用しても、希望の内容が査定できるとは限らないという点がデメリットとなります。
一括査定サイトは、本来は売却価格の査定のためのサービスですが、実際には「貸したらいくらになるか知りたい」という賃料査定を目的として利用する人も多いです。
当然、売買専門の不動産会社では、賃料査定を依頼しても対応はしてくれません。
また、一括査定の利用者は、買取価格やリースバックの価格も知りたいという人もいます。
買取とは、転売を目的とした不動産会社に下取り価格で早く売却する方法を指します。
リースバックとは、売却後に家賃を払うことでそのまま今の家に住み続けられる売却方法のことを指します。
これらのサービスは、買取やリースバック専用の一括査定サイトを利用しないと査定してもらえないことが一般的です。
実際に一括査定サイトでは、単純な売却の目的以外で申し込みをし、希望したサービスを受けられない状況となってしまうケースもあります。
一括査定サイトは何でも対応できるわけではないため、自分の希望に合った査定ができるかを確認したうえで利用することが適切です。
◆参加している不動産会社が少ない
一括査定サイトは、不動産仲介業を行っていない事業者が運営していることがほとんどです。
そのため、ネットでは「本来の価格より高く売れる」などと煽っている広告をよく目にします。
また上述した通り、査定価格と売却価格はイコールではないのに、複数社で比較すれば必ず高く売れると消費者に誤認を与える広告も目立ちます。
そのため、不動産会社の間で評判が悪い一括査定サイトも存在し、本当に実力のある会社は登録していないことが多く、利用しても適切な不動産会社に売却を依頼できないことがよくあります。
不動産会社の中で評判が悪い理由としては、一括査定サイトは不動産会社にとってガセ情報が多いということも挙げられます。
一括査定サイトはしつこい営業電話の問題もあり、利用者が虚偽の電話番号を登録して利用しているケースがよくあります。
過去には運営会社がサクラを使って査定を依頼しているということも問題になったことがありました。
不動産会社は査定参加料を払ったにもかかわらず、依頼者との連絡が取れないため、査定参加料を損してしまうのです。
このように売主とコンタクトが取れない情報を、不動産会社はガセ情報と認識しています。
(※もちろん明らかにいたずらと判断される場合、不動産会社から除外申請することは可能です)
一括査定サイトは登場して久しいですが、悪評も不動産業界の中で浸透しており、営業でゴリ押しできる不動産会社のみが継続して登録している状況となっています。(”ゴリ押し”というちょっとしたパワーワード笑)
売買仲介を行っている不動産会社は数多くあれど、一括査定サイトを利用している業者はごく一部しかないという状況は、事実の一つとして知っておいた方が良いといえます。
この章では、一括査定サイトの適切な利用方法について解説します。
◆価格の検証のために利用する
一括査定サイトは、簡単に複数の不動産会社から査定結果を得られるため、価格の検証のために利用するには有意義なツールです。
例えば、既に依頼したい不動産会社が決まっているものの、その会社の査定結果の妥当性を知るために、念のため、他社からも査定を取ってみるというケースが考えられます。
査定価格は複数社の価格を比較することで妥当性を検証できますので、売主としては複数社に査定を依頼した方が良いといえます。
ただし繰り返しにはなりますが、「査定価格と売却価格はイコールではない」ということは頭に入れておいてください。
◆買取で売却するときに利用する
一括査定サイトの中には、買取専用の一括査定サイトもあります。
買取の査定価格は売却予想価格ではなく、実際に買い取る価格そのものです。
実際に買い取る価格であれば、複数社から査定を取り、高い査定価格を提示してくれる不動産会社を探すことは非常に意味があります。
そのため、買取を希望している人は、買取専用の一括査定サイトを利用することをおすすめします。
◆一般媒介を選択したいときに利用する
一括査定サイトは、一般媒介を選択したいときに利用するというのは合理的です。
媒介とは仲介のことであり、媒介契約とは不動産会社と締結する仲介の契約のことを指します。
媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約とは、同時に複数の不動産会社に売却を依頼できる契約のことです。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、1社だけにしか依頼できない契約になります。
専属専任媒介契約では、自己発見取引と呼ばれる売主が自分で買主を見つけてくる行為が禁止されています。
不動産会社に支払う仲介手数料は成功報酬であるため、一般媒介で複数の不動産会社に依頼しても売主が支払う仲介手数料は1社分のみです。
そのため、一般媒介を選択しても売主が経済的に不利になることはありません。
複数の会社に声をかけることは非常に手間ですが、一括査定サイトを使えば簡単に複数の不動産会社に打診ができます。
そのため、一括査定サイトは一般媒介を利用したい人にとっては便利なサービスです。
以上、不動産売却一括査定の仕組みとリスクについて解説してきました。
一括査定サイトとは、サイト運営会社が不動産会社に売り情報を提供し、不動産会社がお金を払って査定に参加する仕組みのサービスです。
一括査定サイトのリスクには、「必ずしも高く売れるわけではない」や「どのような不動産会社に査定が依頼されるかわからない」、「しつこい営業電話がある」等があります。
一括査定サイトの適切な利用方法を挙げるとすると「価格の検証のために利用する」や「買取で売却するときに利用する」、「一般媒介を選択したいときに利用する」等が考えられます。
不動産の売却を検討する上で、参考にしていただけると幸いです。
台東区・荒川区で不動産売却をお考えの方は城北商事不動産部へお気軽にお問い合わせください。