不動産を取得した後、しばらく経ってから請求される税金として、「不動産取得税」(都道府県税)というものがあります。不動産を取得すると同時に支払ってしまえばいいのですが、この税金は忘れた頃に課税の請求があるため、請求がきてから驚かれることのないよう、あらかじめ把握しておきましょう。
後から課税される税金・・・と聞くと嫌になりますが、個人の住宅の場合には土地・家屋ともに軽減措置があります。
軽減措置の適用があれば不動産取得税はゼロ~数万円程度で済むものの、軽減措置の適用がなければ数十万円になることもあるため、購入する住宅を選ぶ前に軽減措置の内容をしっかりと把握しておきたいものです。
そこで今回は、この不動産取得税について、個人が居住用の住宅を購入したケースを中心に詳しくみていきます。
不動産取得税は、土地や家屋を購入したり、交換や贈与で取得したり、家屋を建築(新築・増築・改築)したりして、不動産を取得したすべての人(個人、法人を問わない)に課税される税金です。
(不動産取得税の対象となるのは「購入」のときだけではなく、「建築」や「贈与」などによる取得のときも課税されるため注意が必要です。)
ただし、例外として相続による取得などは非課税です。さらに、課税標準額が一定の価格未満の場合には免税されることになっています。
また、不動産取得税の対象となる「不動産の取得」は、有償であるか無償であるかを問いません。つまり、仮に不動産をタダで貰ったとしても不動産取得税が必要で、その評価額が贈与税の年間基礎控除額を超える金額であれば贈与税もかかりますし、所有権の移転登記をすれば登録免許税もかかります。
婚姻期間が20年以上の夫婦間における配偶者控除(評価額で2,000万円まで無税となる特例)の制度を活用して不動産を贈与しようとする場合など、贈与税は無税となってもやはり不動産取得税などは課税されるので注意しなければなりません。
また、不動産取得税では登記の有無も問わないことになっています。不動産の取得による所有権の移転などを登記しなければ登録免許税は必要ないものの、不動産取得税はどのような場合でも権利移転の実体に対して課税されるわけです。
※もっとも、その事実を都道府県税事務所により把握されることが前提となるのですが、不動産取得税を逃れようとして所有権移転登記などをしないままいつまでも放置しておくことに、ほとんどメリットはありません。
居住用の住宅やその敷地に対する不動産取得税にはいくつかの軽減措置があり、比較的築年数の浅い標準的な住宅や一般的な敷地では、実質的に課税されない(軽減措置によって税額がゼロになる)ケースも多くなっています。
【不動産取得税の課税と非課税のケース】
購入:課税される
譲渡:課税される
建物の増改築:課税される
等価交換:課税される
相続:課税されない(相続税がかかる)
「購入」には新築の建物を建築したときも含まれますし、新築マンションや中古戸建てを購入したときも含まれます。等価交換とは等価(同じ価値)の不動産を交換することであり、あまり多いケースではありません。一般的に等価交換の場合は金銭の受け渡しはありませんが不動産取得税はかかります。
軽減措置の適用の前にまずは、不動産取得税の計算方法についてお伝えします。
不動産取得税は、課税標準額さえわかれば次の式により簡単に計算できます。
不動産取得税額=課税標準額×税率
不動産取得税を計算する場合の課税標準額は、市町村役場(東京23区は都税事務所)の固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)によることが原則であり、実際の売買価格や建築工事費などではありません。
※また、贈与などによる取得の場合も贈与税における土地の評価方法とは異なります。
不動産取得税は東京都主税局のサイトに「不動産取得税計算ツール」があるので、そちらでシミュレーションすることができます。
不動産取得税は地方税なものの基本的にどの都道府県も大きく変わりません。そのため、東京都以外の不動産も上記の計算ツールを利用できます。
個人の住宅を取得した際には、土地・家屋ともに不動産取得税の軽減措置があります。軽減措置の適用があれば、不動産取得税はゼロ~数万円程度ですむものもあるため、ここからは軽減措置の具体的な要件などについて紹介します。
床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下の住宅を取得(増築、改築を含む)した場合には、課税標準額から1,200万円が控除されます。
また、2020年3月31日までに取得する認定長期優良住宅では、この控除額が1,300万円に増額されることになっています。
家屋の不動産取得税額=(課税標準額-1,200万円)×3%
※ 一戸建て以外の貸家(マンション、アパートなど構造上独立した区画を有する住宅)の場合には40平方メートル以上240平方メートル以下となります。
※ マンションなど区分所有建物の場合には、共用部分の面積を共有持分で按分し、専有面積を加えた合計面積で判定します。
※ 住宅の用に供すること(自己の居住用または賃貸用の住宅であること)。
※ 1998年12月31日以前の取得では価格要件(1平方メートルあたり176,000円以下)がありましたが(新築、中古とも)、現在は価格による制限はありません。
※ 軽減措置の対象となる住宅を新築してから1年以内に、その住宅と一体になる住宅(離れなど)を別途新築したり、あるいは増築したりして合計床面積が240平方メートルを超えることになった場合には、その住宅全体が軽減措置の対象外として扱われ、当初の軽減分が追徴されることになります。
※ この場合の住宅(居住用家屋)の範囲には、いわゆるセカンドハウス(毎月1日以上など定期的に居住の用に供するもの)が含まれますが、別荘(保養目的で利用するものなど)は含まれません。
以下の要件に該当する中古住宅を取得した場合には、課税標準額から一定額が控除されます。ただし、課税標準額のほうが控除額よりも低い金額の場合、不動産取得税額がゼロになるだけで還付などがあるわけではありません。
家屋の不動産取得税額=(課税標準額-控除額)×3%
【軽減措置を受けるための要件】
□ 個人が自己の居住用として取得したもの
□ 1982年(昭和57年)1月1日以後に新築されたもの(登記上の建築日付)
□ 1981年(昭和56年)12月31日以前に新築されたもので新耐震基準に適合していることの証明がなされたもの(「耐震基準適合証明書」など)
□ 1981年(昭和56年)12月31日以前に新築されたもので、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入したもの(2013年4月1日以降の取得にかぎる)
□ 家屋の取得後6か月以内に一定の手続きにより耐震改修工事を実施し、所定の証明を受けたもの(2014年4月1日以降の取得にかぎる)
□ 床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下のもの
※ マンションなど区分所有建物の場合には、共用部分の面積を共有持分で按分し、専有面積を加えた合計面積で判定します。
【控除額】
取得した中古住宅が新築された時期に応じて控除額が異なります。
以下の要件に該当する「住宅用土地」を取得した場合には、税額から一定額が軽減されます。
土地の不動産取得税額=課税標準額×3%-軽減額
□ 新築住宅用の土地と住宅を同時に取得した場合
○ その土地上の住宅が軽減措置の対象であること
○ 自己の居住用以外(賃貸目的など)の場合には、新築後1年以内の未使用の住宅の敷地であること
※ 宅地建物取引業者等が新築してから1年以上経過した未使用住宅を賃貸目的で取得した場合には、土地の軽減対象となりません。
□ 土地を先に取得し、後から住宅を新築する場合
○ 1999年4月1日から2020年3月31日までに土地を取得した場合、軽減措置の対象となる住宅を、土地の取得後3年以内(本則は2年以内)に新築すること
※ 親が土地を取得し、子がその土地に住宅を新築するような場合にも適用されます。
□ 住宅を先に新築し、後からその敷地を取得する場合
○ 軽減措置の対象となる住宅を新築した後、1年以内にその敷地を取得すること
○ 住宅を新築した者が土地を取得すること
□ 中古住宅用の土地を取得した場合
○ その土地上の住宅が軽減措置の対象であること
○ 土地と住宅の取得が同時であるか、土地の取得後1年以内に住宅を取得、もしくは住宅の取得後1年以内にその敷地を取得(当初は借地だったような場合)すること
○ 新築後1年を超えた未使用の住宅用土地(ただし、1998年4月1日以後の新築住宅の場合)を含む
○ 住宅取得者と土地取得者が同じであること
【軽減額】
次のうちいずれか「多いほうの金額」が軽減されます。
(1)45,000円(税額が45,000円未満の場合にはその金額)
(2)a×b×3%
a=〔土地の1平方メートルあたりの価格×1/2〕
b=〔住宅の床面積×2〕
※ aの部分が〔土地の1平方メートルあたりの価格×1/2〕となるのは1996年1月1日から2021年3月31日までの取得であり、以降の取得では〔土地の1平方メートルあたりの価格〕となります。
※ bの部分は、1戸あたり200平方メートルが限度となります。
※ 住宅の持分を取得した場合は〔45,000円×持分〕または〔a×b×3%×持分〕です。
※ 土地の軽減額の計算に「住宅の床面積」が出てくるので勘違いしやすい部分です。間違えないように気をつけてください。
※ この軽減措置により、一般の住宅で土地面積が200平方メートル以下の場合には、実質的に土地の不動産取得税がゼロとされるケースも多くなります。
不動産を取得した際には「不動産取得税」という税金がかかります。
不動産取得税は地方税なので都道府県の税事務署から納税通知書が送付されます。ただ送付されるのは不動産を取得してから半年~1年後なので注意が必要です。
「不動産取得税の対象となるもの」としては、登記の有無を問わず不動産の購入・交換・贈与・建築などがあります。(例外として相続による取得は非課税です。)
また、個人の住宅を取得した際には、土地・家屋ともに不動産取得税の軽減措置があります。
軽減措置の適用があれば、不動産取得税はゼロ~数万円程度ですむものもあるため、軽減措置の要件などについては事前に把握されることをおすすめします。
1940年創業、台東区・荒川区で地域密着