公示地価は、国土交通省(土地鑑定委員会)から毎年1回公示される1月1日現在の土地価格で、公共事業用地を取得する際の価格算定基準とされるほか、一般の土地取引価格の指標にすることが目的となっています。本来は実勢価格に近いはずですが、実際にはかなり乖離している場合も少なくありません。都市部を中心に選ばれた地点(標準地)のみに価格が付され、毎年3月に公表されています。
不動産は一物四価が一般的と言われていますが、「基準地価」を加えた一物五価という考え方もあります。基準地価とは、公示地価に似ていますが、こちらは都道府県によって決定される7月1日現在の土地価格です。公示地価の地点とは異なる「基準地」が選定されていますが、一部は公示地価と共通の地点があります。毎年9月に公表され、公示価格と半年のズレがあるため、基準地価は公示地価を補う役割があります。
◆土地価格の相場を知る方法
地価の相場は、地域ごとの様々な要因によって形成されていますが、一般の人が地価相場を正確に把握することは、それほど簡単ではありません。そこで、一般の人には分かりにくい土地の取引価格に対して、適正な指標を与えるために作られたのが「公示地価」です。
公示する価格は、標準的な土地の更地としての「正常な価格」で単価(円/平方メートル)で表示されます。検討している地域周辺の標準地の「公示地価」や「基準地価」から、その地域における地価の相場を知ることができます。公示地価や基準地価は、国土交通省のHPなどで誰でも簡単に調べることができます。
ただし、公示地価は地域の地価相場を把握するのに便利な指標ですが、あくまでも「標準地」の価格であり、実際に調べたい場所の地価は地域の相場だけではなく、その土地の形状や地形、道路付けなどの個別要因により大きく変化するため、公示地価はあくまで目安として考える必要があります。
≪POINT≫公示地価の特徴
① 地域的な相場観を把握するのに適している。
② 建物の存在や利用状況、売却理由など特別な事情は反映されていない
路線価(相続税路線価)は、相続税や贈与税の算定基礎となる1月1日現在の価格です。公示地価の8割程度が目安とされ、それぞれの土地価格は国税庁(国税局)が決定します。
公示地価や基準地価が選ばれた評価地点だけの価格なのに対して、路線価は(都市部の市街地では)原則としてすべての公道(行き止まり道路を除く)に付されます。従来は8月1日に公表されていましたが、2008年からは毎年7月1日の公表となりました。
◆土地価格の相場を知る方法
路線価は、公示価格と違って購入したい土地が接する道路の単価がそのまま出ているため、道路ごとの微妙な地価の差が単価に反映されます。路線価は公示価格のおおむね80%が目安となっているため、路線価を0.8で割り戻すことで「その土地のおおよその相場」を判断することができます。
路線価図は、国税庁のホームページから閲覧できます。
路線価は、1㎡あたりの価格が千円単位で示されます。たとえば470と書いてあれば、47万円/㎡ということになります。つまり、100㎡の土地であれば、47万円/㎡×100㎡=4700万円となります。
路線価さえ分かれば、簡単に計算できるということになりますが、同じ道に面した土地でも土地の形状は色々あります。路線価は計算しやすい反面、そのままでは、土地の形状などが正しく評価に反映されません。たとえば、旗竿地のような使いづらい不整形地も全て同じ評価になるのは、正しく価値を評価しているとは言えません。
そこで必要となるのが「補正率」です。
◆4つの補正率
①奥行価格補正率:奥行の距離に応じた補正率。土地の一面が道路に面している場合に適用します。
②奥行長大補正率:間口に対し奥行きが特に長い土地の評価を減額する補正率。奥行きが間口の2倍以上の土地が補正の対象となります。
③間口狭小補正率:間口が特に狭い土地が対象で、有効性、利便性に劣る分を減額する補正率です。
④不整形地補正率:整形地に対し、利用価値の低い形の整っていない土地評価を減額するための補正率です。
補正率の中でも、奥行きの距離に応じた補正を行う奥行価格補正率は、特に面積の小さい土地でない限り、必然的に併用する場合が多くなります。例えば、間口が特に狭ければ、奥行き距離が長くなるため、間口狭小補正率と奥行長大補正率を適用します。また、旗竿地の場合、間口狭小補正率と奥行長大補正率を併用したり、不整形地補正率と間口狭小補正率を併用したりします。対象となる土地の内容により、どの補正率を選択するのか、あるいは、どの補正率を組み合わせるのかの判断が、訂正な評価を行う上でのポイントです。
(例)
路線価:200C、土地:180㎡、奥行き距離:25m、普通住宅地区
⇒20万円/㎡×180㎡×0.97㎡(奥行価格補正率)=3,492万円
なお、各補正率は国税庁の「補正率表」で確認できます。
自分の気になる物件があったら、路線価で調べ、補正率を使い、おおよその価格を出してみてもよいかと思います。
固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税や登録免許税などの算定基準となる価格で、評価の見直しは3年ごとに実施されます。原則として(都市部では)すべての私有地に対し価格が付され、各市町村(東京23区は都税事務所)の取り扱い(管轄は総務省)となっています。公示地価の7~8割程度の価格水準とされていますが、実際にはかなり乖離している場合も少なくありません。
また、固定資産税評価額は、不動産を購入する際に必要となる登録免許税や不動産取得税の算定基準ともなります。固定資産税評価額は、総務大臣の定めた固定資産評価基準により、不動産の所在地となる市町村が、家屋、土地それぞれの評価方法を用いて、固定資産課税台帳に登録される価格を決定しています。
◆家屋は「再建築価格」が評価の基準
家屋の固定資産税評価額は、評価の時点で同じ場所に同じ家屋を新築した場合の価格(再建築価格)を基準に計算されます。再建築価格は、「評点式評価法」により、屋根、外壁、天井など部分ごとに定められた評点を合計し「再建築評点数」として求めます。さらに、再建築評点数に経過年数などによる「減点補正率」を乗じ、対象となる家屋の「評点数」を決定します。最後に、評点数に物価水準などによる補正を行った「評点1点当たりの価額」を乗じて、家屋の評価額を決定するという流れになります。
◆土地は「路線価」が評価の基準
土地の固定資産税評価額は、路線価をもとに、宅地の状況(奥行、間口、形状など)により補正を行い決定されます。
≪POINT≫固定資産税評価額の特徴
・固定資産税の他、登録免許税や不動産取得税の算定基準となる価格。不動産の取引の諸費用計算に必須。
・公示価格の約70%と評価が低く、不動産査定の根拠としては不向き
実勢価格とは、実際に売買された価格で、この事例の積み重ねによって取引相場が形成されます。他の価格が1平方メートルあたりの単価で表されるのに対して、取引価格は慣例により坪単価で表示されることもあるでしょう。
また、実勢価格(取引価格)も細かくみれば、
・不動産業者による「査定価格」
・一般市場へ物件情報を公開するときの「売出価格」
・実際に取引された(売買契約が成立した)「成約価格」
の3種類に分けられます。
「査定価格」は不動産業者が物件を調べたうえで「この価格なら売れる」ものとして顧客へ提示する価格ですが、それぞれの事情によって恣意的な要素が含まれるなど、意図的に低く、あるいは高く見積もられることもあります。
「売出価格」には、購入希望者から値引き交渉があることを見越して「査定価格」への上乗せがされているケースも多く、必ずしも土地価格相場の実態を正確に反映しているとはいえません。ところが、売買価格事例のデータとして収集しやすいのは「売出価格」であり、これをもとに市場動向が語られることも多いです。。不動産市場のトレンド(価格が上昇傾向なのか下落傾向なのか、取引が活発か低調か)などにより、「売出価格」の上乗せがたいへん多い時期と上乗せがあまりない時期の波が数年ごとにあるようですから注意が必要です。
「成約価格」は基本的に最も参考となる価格ですが、正確なデータが収集されにくいケースも少なからずあるほか、売主による売り急ぎや特殊な要因が背景にあるときには実際の相場から乖離することもあります。単純に数字だけをみると判断を誤ることもありますので注意が必要です。
◆実勢価格と補正の考え方
実勢価格は、「不相談の個別要素(土地の形状、道路付け、利用状況、建物の状態等)」と「不動産の個別事情(売却理由、販売期間、残債務の有無など)」を全て考慮し、判断されます。
「補正」とは、不動産の個別要素や売主の個別事情を評価に反映し、案件ごとの市場での適正価格を見極めるための修正のことです。個別要素や個別事情は案件ごとに異なり、統一した数字で規定できるほど単純ではないので、具体的な規定がありません。
◆修繕の有無は補正の対象となりうる
個別要素として、建物の状態はとても重要なポイントです。仮に、同じ建築後20年の建物であっても、計画的に修繕を実施してきた建物と新築後一度も修繕を行っていない建物とでは、建物のとしての評価は全く異なります。計画的に修繕を実施してきた建物と比較し、新築後20年間一度も修繕していない建物の場合、屋根、外壁、住宅設備類など、将来的に必要となる修繕費用が購入希望価格に必然的に反映されます。
また、建物の状態が悪く、雨漏り、シロアリ、木部の腐食等の修繕に急を要する不具合箇所存在していれば、必要となる修繕費用を評価時点で減額されることが多いです。その他、売却理由、販売期間、タイミングなどによっても実勢価格というのは変動していきます。
詳しい土地価格を知りたい場合は地域の不動産会社に相談
土地の価格には、「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」「実勢価格」と4種類の価格が存在します。
公示地価や路線価を調べることで、ご自身でもおおよその相場を知ることはできますが、土地の「実勢価格」は、周辺地域の地価トレンドや個別の取引事情などにより、どうしても差が生じてしまいます。
不動産の価格については、普段不動産の取引をしたことない方にとっては判断が難しいと思いますので、検討中の土地価格について、より詳細な価格について知りたい場合は、地元の相場に詳しい不動産会社に相談する必要があります。
台東区・荒川区の土地の売買に関することは城北商事不動産部へお気軽にご連絡ください。
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