一軒家を売却する予定の方は、「戸建ての売却の流れはどのようなものなのだろうか?」、「家の売却期間はどれくらいなのだろうか?」と気になっている人もいらっしゃると思います。
戸建ての売却は準備段階から引渡まで半年以上かかることもあるため、あらかじめ全体の流れを把握しておくことが望ましいです。
この記事では、「戸建て売却の流れ」について解説します。
戸建ての売却の流れの全体像を示すと、下図の通りです。
「戸建ての価格査定」から「引渡」まで、スムーズに運んで4.5ヵ月程度の期間がかかります。
戸建て売却の流れの中で最も大きなポイントは、「売買契約の締結」と「引渡」が別日で行われるという点です。
引渡とは所有権が移転する日のことを指します。
通常、一般的な商品の売買では、契約(口頭契約も含む)と引渡は同時です。
しかしながら、不動産の売買では、売買契約と引渡との間に1ヶ月程度の時間が空きます。
不動産の売買における「売買契約」とは、「引渡の日にいくらで売ります」という約束を書面でするといったイメージのものです。
「所有権の移転」も「売買代金の支払」も、全て引渡日に行われます。
また、不動産の売買では、売り出してから買主が決まるまでの販売期間が長いという点も特徴です。
販売期間は通常3ヶ月程度の時間が必要となります。
販売期間は確実に「何日」とは断定できないことから、戸建ての売却は余裕を持ったスケジュールを組んで行うこともポイントです。
【諸費用】
戸建て売却には様々な費用や税金が発生します。売却代金がすべて手元に残るわけではありませんので、必要な費用について事前に把握しておきましょう。売却費用の内訳は以下の通りです。
・仲介手数料:売却価格×3%+6万円(税別)
・印紙税:1~6万円 ※売却価格により異なる
・登記費用(登録免許税・司法書士の報酬):1~3万円
・一括返済手数料(ローンが残っている場合):1~3万円
・譲渡所得税(売却で利益が出た場合):売却利益×所有期間に応じた税率(所有期間が5年以下なら39.63%、所有期間が5年超なら20.315%)
・測量費用(必要な場合のみ):50~80万円
・解体費用(必要な場合のみ):100~300万円
・その他諸費用(引越し費用やハウスクリーニングなど)
売買契約から引渡までの期間は一般的に「1ヵ月」程度です。
引渡日は買主と協議して決めることができるため、引渡日の調整は売買当事者の意思でコントロールすることができます。
一方で、販売期間は売主の意思で自由にコントロールできるものではありません。
早く売れる場合もありますし、なかなか売れない場合もあります。
では、実際のところ、戸建ての売却期間はどの程度かかっているのでしょうか。
公益財団法人東日本不動産流通機構では、レインズに物件が登録されてから売買契約が決まるまでの期間を公表しています。
レインズとは全国の不動産会社が利用しているシステムのことですが、不動産会社は一定の契約方法で仲介を依頼された後、物件情報を5~7日以内にレインズに売り物件の情報を登録しなければならないという義務があります。
以下のグラフは、レインズに物件が登録されてから売却されるまでの平均日数について、過去10年間の推移を示したものです。
過去10年間の販売日数を平均すると戸建ては「93.7日」、土地は「93.5日」、マンションは「75.5日」です。
実際には不動産会社が仲介を依頼されてから5~7日程度のズレがあるため、戸建ては売りだしてから売買契約が決まるまで統計上は「100日」程度かかっていることになります。
つまり、販売期間は「3ヶ月強」の期間を見込んで余裕を持ったスケジュールを組んでおく必要があるということです。
戸建て売却の流れの各ステップについて解説します。
ステップ①境界確定
戸建てを売るには、原則として土地の境界が確定していることが必要です。
境界は、隣地との境である「民々境界」と道路との境である「官民境界」の2種類があります。
売却するには、原則として民々境界も官民境界も確定していることが必要となります。
全ての境界が確定している場合、「確定測量図」等の「確定」という2文字が入っている測量図を持っているはずです。
確定測量図があればすぐに売却活動に移ることができますが、なければ測量会社に依頼して境界確定を行う必要があります。
特に、官民境界の確定には時間がかかります。
確定測量図は、最低限、引渡時までには用意しておく必要があるため、持っていない場合には最初に境界確定から着手することが適切です。
ステップ②相場の調査
戸建てを売却する場合、価格査定を依頼する前に自分でも相場の調査をしておくことが適切といえます。
戸建ての売却に時間がかかる理由の一つに、「売り出し価格」が高過ぎてなかなか決まらないという点が挙げられます。
なぜ売り出し価格が高めになってしまうかというと、不動産会社の査定結果が高過ぎることもあるからです。
戸建ての査定は不動産会社にとっても難しく、仮に査定を複数社に依頼すると査定結果に差が大きく開くことがあります。
売主が相場を知らずに高過ぎる査定結果に飛びついてしまうと、売り出し価格が高過ぎて売却に苦戦してしまいます。
査定結果に対して「高過ぎる」または「安過ぎる」といった判断をできるようにするためにも、自分でも相場を掴んでおくことは重要なのです。
地域や最寄り駅、土地や建物の面積、築年数等を設定することで、類似の物件が実際にいくらくらいで売買されているか知ることができます。
ステップ③戸建ての価格査定
相場を把握したら、次に不動産会社に査定を依頼します。 不動産会社への査定依頼は無料です。
査定の依頼時には、最低限、以下の書類を用意しておく必要があります。
◆査定時に最低限用意しておきたい資料
・登記済証(権利証)または登記識別情報
・土地の確定測量図
・建物の間取りがわかる図面
リフォーム等を行っている場合は、リフォームの内容が分かる資料があると望ましいです。
また、住宅性能評価書や建物状況調査(インスペクション)報告書、耐震診断結果報告書等の建物の価値を示す客観的な資料があれば用意しておきます。
ステップ④媒介契約の締結
不動産会社に依頼する仲介の契約のことを「媒介契約」と呼びます。
仲介を依頼する不動産会社が決まったら、その会社と媒介契約を締結します。
売り出し価格に関しても、媒介契約を締結する不動産会社とよく相談したうえで決定します。
ステップ⑤販売活動の開始
実際の販売活動は、不動産会社が中心になって行います。
ただし、売主も販売活動を開始するに当たり、「広告用の写真を撮れる状態にしておく」、「掃除等の内覧の準備をする」といった対応が必要です。
内覧とは、購入希望者に家の中を見てもらうことを指します。
また、住みながら家を売る場合は、内覧当日の立会いも必要となります。
ステップ⑥買付証明書の受領
買付証明書とは、買主の不動産購入の正式な意思を示す書面のことです。
本気で購入したい希望者が現れたら、その購入希望者から買付証明書を受領します。
ステップ⑦売買契約の締結
契約の条件が整ったら、売買契約書を書面で締結します。
売買契約では、契約が成立した証として買主から手付金を受領します。
手付金の相場は、売買代金の10%程度です。
また、売主は仲介手数料の半額を不動産会社に対して支払います。
住みながら売る場合、引っ越しは売買契約から引渡までの間に行うことが一般的です。
◆売買契約時に必要な書類
・登記済権利証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
・住民票
・固定資産税納税通知書
・実印
ステップ⑧引渡
引渡では、手付金を除く残金が買主から支払われます。
引渡日以降の固定資産税を日割り計算した「固定資産税精算金」も買主から支払われます。
また、売主は仲介手数料の残りの半額分を不動産会社に支払います。
所有権も引渡日に移転します。
具体的には「鍵」を渡すことで引渡とします。
売主は、買主および司法書士に対して以下の書類を引渡日に渡します。
◆買主に引き渡す書類
・確定測量図
・境界確認書
・越境の覚書(あれば)
・建築確認通知書および検査済証
◆司法書士に引き渡す書類
・登記済証(権利証)または登記識別情報
・印鑑証明書(3ヵ月以内に発行のもの)
・固定資産評価証明書
・住民票
ステップ⑨確定申告
確定申告が必要となる人は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
確定申告が必要な場合とは、「税金が発生する」または「特例を利用する」ケースです。
以上、戸建て売却の流れについて解説してきました。
家の売却期間は平均で「3ヶ月強」です。
焦って安く売らないようにするためにも、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。