不動産購入を検討の際、築年数の古いマンションを買ったら今後どうなるんだろうと考えたことはありませんか?
不動産会社としてお客様と接しているとこのような質問は多く聞かれます。
そこで、今回はマンションの寿命や建て替えを巡る現状と課題、今後の動向についてご紹介します。
そもそもマンションの寿命は何年程度なのか、ご存知でしょうか。
マンションはしっかりと修繕していたとしても寿命があり、下記の観点より判断される事も多いです。
①耐震性
現在も日本各地で頻発する地震ですが、耐震性能は外せない要因となります。
具体的には、1981年を境にした旧耐震基準と新耐震基準で、1981年以前のマンションでは、コンクリートの性能から鉄筋の量、施工法などが異なっているため、大きな地震に対する耐力が現行基準の建物に比べると残念ながら低くなります。
では、そうした旧耐震基準のマンションは耐震診断を受けて、耐震改修工事を施せばよいのでは?とも思えますが、そう簡単な話ではないそうです。
耐震改修工事を施したとしても、現行の耐震基準と同等の耐震性が確保できるわけではありません。あくまでも倒壊などを防ぐという意味で、一定の効果があるということで、マンションの場合、柱や梁に囲まれた部分に鉄骨の筋交いを増設することになりますが、美観の問題もあってなかなか耐震改修に踏み切りにくいという事情もあります。
そのため、直下型の地震があった場合には倒壊する可能性が高くなってきます。
②経年劣化
建物全般に言えるのは、寿命というのは修繕状況に関わってくるということです。
建物をもたせようと思えば寿命をのばすことは不可能ではないようです。
ですが、これも新耐震基準のマンションで、定期的に構造躯体や防水・仕上げ、配管などの修繕を適正に実施していればの話となります。
マンションの寿命は管理状況に左右される事になりますので、ご自身の住んでいるマンションや今後購入されるマンションの管理状況はしっかりと確認しましょう。
建物は築年数によって修繕箇所も増えていき、その分費用もかかってくることになります。
では、ここで気になるのが築古になったマンションは建て替えができるのかどうかという問題です。
現状がどうなっているのか見ていきましょう。
2022年の国土交通省の資料によると、全国で建て替えが決まったマンションは、316物件(準備中も含む)しかありません。
しかし、2021年には築50年超のマンションが全国で21.1万戸に達しています。2026年には約3倍に膨れ上がり、60.4万戸になる見込みです。
また、震度7の大地震にも耐えると考えられている現在の耐震基準が定められる前に建築された、いわゆる「旧耐震」のマンションは全国に146万戸存在します。
このような築50年超のマンションや旧耐震のマンションは、今後スムーズに建て替えが進むのかというと、実際はそう簡単ではありません。
マンション建て替えが進まない理由は大きく2つあります。
それは、「法制度の問題」と「経済面の問題」です。
詳しく見ていきましょう。
現在の法制度では、マンションを建て替えるためには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。
【区分所有法62条1】区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる
つまり、100戸のマンションなら80戸が賛成すると建て替えを決議できます。
しかし、逆に考えると、21戸が反対もしくは賛成しないと建て替えられないということになり、5分の4以上の賛成を得るのは現実にはかなり難しいといえます。
分譲マンションの管理組合が総会を開くと、その決議を有効にできる定足数は半数です。100戸のマンションならあわせて50戸が出席もしくは委任状などを提出しなければ、総会自体が成立しません。
大多数の管理組合が、この定足数を満たすために四苦八苦しているのが現状のなかで、「5分の4」の「賛成」を得ることは途方もなく困難といえるでしょう。
特に古い老朽化したマンションには高齢者が多く、高齢者は引っ越しを嫌う傾向があります。
また、今までの環境を変えたがらず、「今のままでも十分に暮らせるではないか」という理由で賛成しない方が多いと聞きます。
そのため、この「5分の4」というのは、かなり高いハードルだと考えた方がいいでしょう。
ただし、これまでに316以上の管理組合がそれを成し遂げているのも事実であり、まったく不可能というわけではありません。
経済面での問題は、さらに深刻な状況です。
これまでの建て替えが実現した例を見ると、ほとんどが区分所有者の負担金がゼロの場合です。逆にいえば、各区分所有者の持ち出しがゼロだからこそ5分の4という高い賛成が得られたとも言えます。なかには、かなり稀ですが転居の費用や仮住まいの家賃までゼロになるケースもあります。
マンションを新たに建設する場合、建築費の目安は1戸あたりおよそ2000万円。仮に、これが全額自己負担だった場合、100戸のマンションを自己負担100%で建て替えるためには、80戸が「2000万円+転居・仮住まい」の費用を負担できる経済力があって、かつ賛成票を投じる必要があります。
老朽化したマンションの区分所有者は大半が高齢者です。この費用を負担できる区分所有者はそれなりにいるかもしれませんが、全体の8割が可能かと想定するのは現実的ではありません。
また、これが半分の1000万円になったところで、都心の超高級マンションでもない限り8割というハードルは高すぎます。やはり、建て替えが実現するには「負担金がゼロ」の条件を整えなければ実質は進まない可能性が高いです。
それでは、区分所有者の負担がゼロになるにはどのような要件が必要でしょうか。
考えられるのは主に下記の2つです。
①敷地の容積がふんだんに余っている
②その場所が新築マンションの立地にふさわしい
「容積」とは、行政から規制されているその敷地に建てられる建物の最大の床面積のことです。「容積率」という数値で、敷地の面積の何パーセントかを定められています。例えば、800平方メートルの敷地の容積率が400%なら、建物延床面積3200平方メートルまでの建物を建築できるということになります。
しかし、実際のところ「容積が余っている」マンションはほとんどありません。余っているどころか、規制が厳しくなって現状のマンションの容積が規制を超えて「既存不適格」になっている老朽化マンションも実は多いのです。そういうマンションを無理に建て替える場合、全区分所有者が再入居する場合は1戸当たりの面積が小さくなってしまいます。
建て替え事業を行うディベロッパーは、余っている容積率・もしくは緩和された容積率から算出された床面積分の住戸を販売した利益で建築・設計費や自社の利益を賄う必要があります。つまり、仮にそれが1000平方メートルだった場合、新たに販売する1000平方メートル分の住戸の売却で、建築・設計費+利益が見込める敷地でないと、建て替え事業に乗ってこないということになります。
つまり、ディベロッパーの立場からすると、立地が一等地であったなら、新たな住戸の販売には心配もないが、郊外の駅から離れた場所にあるマンションだと、販売面での不安が残ります。そのため、たとえ容積が余っていても立地条件の良くないマンションの建て替えは難しい可能性が高いということになります。駅に近い物件には多少の望みはありますが、バス便案件になると絶望的です。
したがって、マンションの老朽化を建て替えによって解決する、という選択肢は一部の幸運な物件にしかありえないレアケースと言えると思います。
では、これからますます増えていく老朽マンションはどうなっていくのでしょうか。
結論からいえば、今の法制度が続く限りにおいて、特に地方や遠隔郊外に立地するマンションは「スラム化」「廃墟化」への道を歩む可能性が高いでしょう。
都心の好立地にあるマンションは修繕などによってできる限り老朽化を食い止め、ひたすら延命を図ることになる可能性が高いといえそうです。
再開発や区画整理などによるインフラ整備などによって、旧耐震の古いマンションが建替えされていることもありますが、築年数の古いマンションでしたら、修繕状況は総会などで常に議題にあがっているかと思います。
ご自身の住まわれているマンションでしたら、他人任せにせず、自発的にマンションの状況を把握し、長く住むことが出来るよう修繕していくと良いと思います。
これから購入する場合については長期修繕計画など、既に計画でどのようになっているかも判断材料となりますので、確認してみるのをおすすめします。
築年数の古いマンション購入を検討する際には、どこにあるのか、エリアがものすごく重要となります。
このあたりもきちんと踏まえて検討していく必要がありますので、お気を付けください。
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