「不動産を売却するとき税金はいくらかかるの?」
こんにちは。1940年創業、台東区・荒川区で地域密着の城北商事不動産部です。
不動産売却にかかる税金は、売却時に利益が出たときにかかる「譲渡所得税」と売却手続きにかかる「登録免許税」「印紙税」の3種類があります。
※登録免許税と印紙税については前回の記事をご覧ください。
特に譲渡所得税は大きな金額になることがありますが、特例を利用することで大幅に減らすことができる可能性があります。
そこで今回は、そもそも譲渡所得税とは何?ということから計算方法、そして税額軽減できる特例について解説します。
譲渡所得税とは、不動産売却時に利益が発生したときにかかる所得税・住民税の総称です。
譲渡所得税は以下のように計算します。
【譲渡所得税の計算方法】
譲渡所得税額=課税譲渡所得 × 税率(20~39%)
譲渡所得はあくまで”利益”に対してかかるものなので、売却価格そのものに税率をかけて計算するのではなく、売却価格から購入価格と売買にかかった経費を差し引いた金額が課税対象となります。
つまり、課税譲渡所得は以下のような計算式となります。
【課税譲渡所得の計算方法】
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
各項目の内訳
譲渡価額:不動産が売れた価格
取得費:土地や建物などの不動産を取得するときにかかった費用。
不動産の購入代金だけでなく、購入時の仲介手数料、建築代金、登記手数料なども含まれます。
なお、建物の取得費は、建物の購入代金などの合計金額から、築年数に応じた減価償却費相当額を差し引いて計算します。
また、相続した不動産などで購入価格が不明な場合は、売却価格の5%として計算します。
譲渡費用:不動産を売るときに直接かかった費用。
売却時の仲介手数料・印紙税・建物の解体費用や測量費など
税率は所有期間が5年以下と5年超で異なる
譲渡所得税(所得税・住民税)の税率は、所有期間が5年以下の場合「短期譲渡所得」、所有期間が5年超の場合「長期譲渡所得」として以下のように計算します。
【譲渡所得の税率】
短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合)
=39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
長期譲渡所得(所有期間が5年超の場合)
=20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
※2013年から2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されます
なお、所有期間は売却した年の1月1日時点を判断基準にするので注意が必要です。
例えば、2016年4月1日に購入した不動産を2021年4月1日に売却した場合、2021年1月1日時点の所有期間は4年なので短期譲渡所得となり、税負担が重くなってしまいます。
譲渡所得税を控除するための特例
不動産売却の税金では、特に譲渡所得税が大きな金額になる可能性があります。
しかし、譲渡所得税には様々な特例があり、適用できれば大幅に税額が軽減できます。
なお、税額控除の特例を適用するためには必ず確定申告が必要になります。
今回は、よく利用される居住用不動産(マイホーム)に関する特例を3つ紹介します。
【特例1:3,000万円特別控除】
居住用不動産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得が最高3,000万円まで非課税になる特例です。
つまり、不動産の売却益が3000万円以上であれば3000万円が控除され、3000万円以下であれば、その金額全てが控除されます。
ただし、控除を受けるためにはいくつかの適用要件があります。
売却する物件はマイホームであることが前提(単身赴任の場合に配偶者が住んでいる建物であれば適用可)で、物件の買主が配偶者・直系血族・同族会社ではないこと、前年や前々年にこの控除を使っていないことなどです。
ただし、この特例は住宅ローン控除と併用できないので、住み替えの場合は注意してください。
【特例2:所有期間が10年を超える場合の軽減税率の特例】
マイホームの所有期間が10年を超えて売却した場合には、長期譲渡所得の税額より低い税率で計算する軽減税率を適用できる特例です。
この特例を利用する場合の税率は譲渡所得金額の6,000万円以下と6,000万円を超える部分で変わります。
〈10年超の所有軽減税率の特例を受けた場合の税率〉
6,000万円以下の部分:所得税10.21%+住民税4%=合計14.21%
6,000万円超の部分:所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
※2013年から2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されています
この特例を利用する条件は、売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えていること、物件の買主が親子や夫婦間ではないこと、前年・前々年にこの特例を受けていないことなどです。
なお、この特例も住宅ローン控除とは併用出来ませんが、特例1の「3000万円特別控除」と併用することが出来ます。
【特例3:買換え特例】
マイホームの売却価格より、買換えたマイホームの購入価格の方が大きければ譲渡所得課税を先送りできるという特例です。
この制度は税金の支払いを免除するのではなく、課税の繰延べと言われています。
繰り延べできる金額は、新たに取得するマイホームの購入価格によって変わります。
新たなマイホームの購入価格が、元のマイホームの売却価格と同額以上の場合は、税金を全額繰り延べできます。新たなマイホームの購入価格のほうが低い場合は、差額に対して税金がかかります。
特例を利用するための条件は、マイホームであること、売却価格が1億円以下であること、売却した年の1月1日時点で売却する不動産の所有期間が10年を超えていること、売主の居住期間が10年以上であることなどです。
なお、買換え特例は他の制度との併用は出来ません。
【その他の特例】
譲渡所得税の特例としては、上記のほか、「相続した不動産の場合の取得費加算特例」や「空き家に係る譲渡取得の特別控除」などがあります。
なお、今回は不動産売却で利益が出た場合の特例を紹介しましたが、不動産売却で損失(=譲渡損)が発生したときは「譲渡損失の損益通算」や「譲渡損失の繰越控除」といった特例が利用できます。確定申告をすることで、不動産売却で利益が出たときは節税ができ、損失が出たときは還付を受けられることがあります。
多くの人にとって不動産売却はあまり経験する機会がないため、税金に関する知識は専門用語などに戸惑うケースも多いかと思います。
不動産売却の税金の中で、譲渡所得税は大部分を占めますが、負担を軽減できる特例もありますので、上手に選択し賢く活用しましょう。
売却を検討する際には、今一度、税制の仕組みや控除・特例の内容をしっかり確認することをおすすめします。