不動産の相続登記には義務がなく、さまざまな問題が気がついたら大きくなっているケースが増えており、現在では社会問題として法改正の動きがでているほどです。
相続による登記は義務がないうえに、日常生活において問題がでにくいので、相続登記をしないまま何年も放置する事例が、全国各地で目立つようになっています。
さまざまな社会問題は、この放置された登記手続きが起因しており、この状態が継続すると、国の経済に大きな損失を与える試算もでているようです。
実は身近な不動産の相続登記について、概要や登記をしない個人的・社会的なデメリット、義務化への動きをご紹介します!
不動産の相続登記には義務がないので、所有者が変更されずに亡くなった人のままの事例がたくさんあります。
義務だけでなく、所有者を変更する期限もないので、相続後に名義変更する必要性が薄いからです。
ほかにもあげられる所有者を変更しない理由と相続登記しないデメリット3つをみていきます。
<相続登記は手続きが煩雑で所有者を変更すると税金がかかる!>
登記の手続きには手間がかかり、さっと申請できないので、司法書士などに依頼するのが一般的です。
司法書士に頼めばもちろん費用が発生し、手間との二重苦による煩雑さにより、そのまま放置される現実もあります。
加えて、所有者を変更すると、固定資産税などの税金の支払いの義務が発生するのも、一つの要因となっているようです。
また、不動産の管理責任も登記された名義人にかかってくるので、義務化されていない背景があいまって、変更に歯止めをかける要因となっているのでしょう。
<所有者を変更しないデメリット3選>
面倒くさいからといって相続登記をしないと、個人的に不利益を被るケースがあるので、よくある3パターンをみていきます。
・売却できない
名義人になっていないと、不動産の売却をできないデメリットがあります。
登記の性質上、被相続人から購入希望者へ、直接の名義変更はできない仕組みになっているので、売却には相続登記がどうしても必要です。
名義人になっていないと売却をできないので、相続すると同時に手続きをすませておいてくださいね。
同じく担保権の設定もできず、デメリットとなるかもしれません。
・相続人が増える
登記を放置したまま何世代も相続が進むと、相続人が増えて、手続きがより煩雑になる可能性が高いです。
相続不動産を活用しようにも遺産分割協議がまとまらないどころか、相続人を探すのに膨大な時間やコストが価格かもしれません。
また、人数が多くなるほど揉め事が増える可能性があり、全員の同意をとれずに名義人変更が難航するケースもありますよ。
手間をかけるのが嫌だからと放置しておくと、自分の子どもや孫の代ではさらに複雑になり、迷惑をかけると覚えておいてくださいね。
・差し押さえられる
相続人の誰かに債務があれば、債権者によって、不動産を差し押さえられる状況が考えられます。
債務者の法定相続分を差し押さえられると、遺産分割協議に支障をきたすでしょう。
また、遺産分割協議が終わっていても、手続きをしていなければ、債権者に対して権利の主張をできないのもデメリットです。
不動産の相続登記のさまざまな問題により、現在、義務化の動きがでています。
義務化へと動き出した背景について大きな2点をみていきましょう。
<東日本大震災後の復旧の妨げに>
東日本大震災のあと、津波被害跡地の登記を確認しても所有者がわからず、復興事業の妨げとなりました。
この経験により、所有者不明の土地問題がさらに大きくとりあげられ、義務化への動きとなっているようです。
また、所有者不明の全国の土地面積は、約410haにも及び、このまま放置し続けると2040年には北海道と同程度の面積である約720haになる試算がでています。
<少なく見積もって6兆円の経済損失>
所有者不明の土地面積が約720haとなる2040年には、経済損失が少なく見積もっても累計で約6兆円と試算されています。
この試算は民間組織の「所有者不明土地問題研究会」によるもので、2016年で約1,800億円/年、2040年で約3,100臆円/年のデータもだしていますよ。
不動産の相続登記の義務化における、法改正のポイントとその時期についてご紹介します。
<改正のポイントとなる4項目>
相続登記における法改正では、新たな所有者不明の土地の発生防止を中心としたシステムが検討されています。
現状で、問題を発生させている要因をなくすような4つの項目が、改正の対象として話し合われているようです。
・申請の義務化
登記申請を義務化して、相続すれば手続きをしなくてはならない環境づくりを検討中です。
義務化されれば、違反者には罰則があるので、罰金などのペナルティも視野にいれられていますよ。
名義変更が進まない大きな要因といえるのが、義務がなく放置される点なので、義務化されれば、問題解決に大きく前進するといえそうですね。
・所有権の放棄
所有権の放棄を認める法案も検討中で、放棄できる条件や放棄後の受け皿機関についても話し合われているようです。
遠方に住んでいて管理ができないケースに有効的で、相続したくてもできない、物理的な問題を抱える人が解決策をみいだしやすくなるでしょう。
・遺産分割協議の期限
遺産分割協議がまとまらず、裁判所への申し立てもなければ、一定期間後に権利が自動的に決まる仕組みをつくる案もでています。
一定期間には3年、5年、10年などの複数の案が検討されているようです。
相続したくない不動産ほど、遺産分割協議が進まないと予想されるので、自動的に権利者を決めてしまえれば、社会問題の解決にはなりそうです。
話し合いがまとまらないからといって、放置されたままになる心配がないのが魅力的ですが、自動的に決める方法が少々気になるかもしれませんね。
・相続財産管理人の選任
相続財産管理人の選任を債権者などができる案もでており、相続人のいない不動産の活用に期待されています。
相続人の有無を調べたり、売却により債務の回収にあてたりできるよう、改正を検討中です。
また、選任の依頼費用削減のため、調査期間を3ケ月から5ケ月程度に短縮する動きもでており、管理人選任のハードルを下げる話し合いももたれています。
<法改正の時期>
民法と不動産登記法改正の時期は2020年までとして、政府で話し合われているようですが、施行はもう少し先になりそうです。
国民に周知させなければ現実的な実施が難しく、その期間が必要となるからです。
秋の臨時国会で法案が提出される予定なので、実施はそれ以降と予想されるでしょう。
不動産の相続登記には義務がなく、名義人を変更しないままの土地が、全国各地に増加しており、大きな社会問題となっています。
手続きには時間と手間、さらには費用がかかるので、目前の問題がなければ放置したままの人が多いようです。
何年も名義変更されていない土地は、売却などをしたくても、関係者が増えていき、想像以上の手間がかかる状態になってしまいます。
また、社会的にみても、東日本大震災後の津波被害跡地では、所有者のわからない土地が多く、復興事業の妨げになった経緯があります。
法改正から施行までの期間は、申請が増加する見込みがあるので、ぜひ早いうちに手続きを始めるようにしてくださいね!