不動産投資を始める際に、キャピタルゲイン、インカムゲインといった言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
まずキャピタルゲインとは、資産(不動産)を売買することによって得られる利益であり、資産を購入した時よりも高く売却できれば、そのぶんの差額が利益となります。
そしてインカムゲインとは、資産(不動産)を保有することにより、定期的に得られる利益を指します。
日本国内において、不動産投資するにあたって向き不向きがあるといった説がありますが、これは事実なのでしょうか?
そこで今回は、キャピタルゲイン・インカムゲインの特色、リスク、メリット・デメリットについて解説します。
不動産売買による差額で利益を生み出すキャピタルゲインは、不動産投資でありながらも比較的少ない元手で資産を増やせる可能性を秘めています。
とはいえ、投資ですから必ずしも思ったようなリターンがあるわけではなく、場合によってはマイナスになることあるでしょう。
ここでは、キャピタルゲインで想定される3つのリスクについて解説します。
<ハイリスク・ハイリターンが大前提>
キャピタルゲインはハイリスク・ハイリターンであるため、想像以上に大きな利益が得られる可能性もあれば、取り返しがつかないほどに損をしてしまう可能性もあるのが現実です。
万が一、投資に失敗してしまった場合の損失額は、不動産投資は特に大きいといわれています。
マイナスのことばかりを考えていては、思い切った投資はできませんが、大きなリスクが付きものであるといったことを理解したうえで、キャピタルゲインを狙っていきましょう。
<売れない期間が長期化するとリスク増大>
キャピタルゲインにおけるハイリスクの要素に、売りたくても売れないといったことがあります。
投資では誰もが安く買って高く売りたいのですが、物件が売れなければ利益は出ないどころか、税金を支払わなければならないので、常に赤字になってしまう可能性も。
日本全体の景気が徐々に悪化するのであれば情報をキャッチできますが、自然災害や新型コロナウイルス感染症のような、突発的なできごとも発生する可能性があります。
売却しなければ利益にならないキャピタルゲインには、このようなリスクも想定しておきたいですね。
<不動産投資家としてのノウハウと資産が必要である>
比較的少ない資産からでもスタートして利益を得ることができるのがキャピタルゲインですが、大きな利益を生み出すにはそれなりの資産が必要です。
キャピタルゲインの方法として、安い物件を購入してリフォームなどをしたうえで再販売することによって利益を生み出すこともあれば、安い物件を強気に高い値段で売るといったものまであります。
いずれにしても「安い物件をいかにして、少しでも高く売却するか」といったノウハウと経験が必要なのです。
知識さえあれば、2,000万円で購入したマンションを200万円かけてリフォーム・リノベーションしたあと、2,500万円で売却すれば、数ヶ月で300万円の利益が出せる…といったこともあるでしょう。
ただし、不動産売買の際は諸費用や税金が必要となるので、たとえ物件価格だけで計算するとプラスでも手残りの現金は少なくなってしまうので覚えておきましょう。
リスクはメリットと紙一重である側面もありますが、プロとしてのノウハウがなければ手出しできない投資法といえます。
上記ではキャピタルゲインのリスクや特色について解説しました。
ここでは、もう一方のインカムゲインのメリット・デメリットについて紹介します。
キャピタルゲインと比べると、ローリスク・ローリターンが特徴です。
<インカムゲイン狙いのメリット1:定期的な収入が見込める>
キャピタルゲインと大きく違う点でもあり、メリットなのが、家賃収入で安定した収入が見込めることです。
所有する物件に入居者がいる限り、毎月家賃としての収入が得られます。
入居者対応や管理では費用はかかりますが、管理会社に委託すれば、あなた自身が動かずに収入を得られるのです。
<インカムゲイン狙いのメリット2:高い安定性>
キャピタルゲインはハイリスク・ハイリターン、インカムゲインはローリスク・ローリターンであり、リターンは少ないものの、高い安定性が大きなメリットです。
家賃は一度決めてしまえば、よほどのことがない限り、上げたり下げたりといった変動はないでしょう。
ひと月で何百万円の利益といったハイリターンはないものの「今月、来月と近いうちに所有物件が売れるかわからない…」といった不安を抱えず、ストレスが少ないのがインカムゲインのよいところですね。
<インカムゲイン狙いのデメリット1:空室リスクがある>
所有する物件が常に満室であればよいのですが、入居者の退去は必ずあります。
当然ではありますが、空室の期間はその部屋の家賃収入がなく、そのぶん収入が減ってしまいます。
退去したらすぐに入居者を募集して、できるだけ満室の状態をキープして、常にフルで家賃収入を得たいですよね。
しかし、空室期間が長く続けば続くほど、空室ロスによる家賃収入の低下や、家賃を下げたりと、経費の面でのリスクが出てきます。
サービスや家賃、見た目のきれいさなど、常に入居者が住みたいと思える物件に管理をしていく維持費も必要となるでしょう。
<インカムゲイン狙いのデメリット2:運営コストがかかる>
不動産投資においては、物件を運営するためのさまざまなコストがかかります。
・管理費(管理会社に管理を委託している場合)
・固定資産税、都市計画税
・修繕費
・入居者募集費
さらに駐車場やエレベーターなどの共有部分では、定期的な清掃やメンテナンスが必要です。
家賃収入のうち、約10~20%が運営コストの割合が平均であり、これは決して少なくない数字であり、空室率が高いと大きな負担になるでしょう。
日本の不動産を買いにくる海外の投資家は、インカムゲインを目的としていることも多いです。
なぜなら諸外国では、システムの簡略化や法整備で不動産売買の速度を高めていますが、日本は短期売買がしにくく、長期的な視点が必要だからです。
そのことから、日本の不動産投資ではキャピタルゲイン狙いに壁があり、すなわち「日本では投資方法としては不向き」といえるのかもしれません。
ここでは、キャピタルゲインにおける壁と発生する税金を中心とした解説をします。
<不動産売却して得た利益には税金がかかる>
キャピタルゲインでは、資産を譲渡する際に発生した利益に対して課税されます。
これを譲渡所得といい、不動産売却価格から、売買にかかった費用を差し引いて計算するものであり、売却金額に対して課税されるものではありません。
譲渡所得の計算方法は、
■譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
・譲渡収入:売却代金
・取得費:売却した不動産の購入代金、建築代金、購入手数料など
・譲渡費用:不動産売却時のためにかかった費用(仲介手数料・印紙代など)
<節税と特例について>
個人の場合ですが、平成21年取得した土地を平成27年以降に譲渡、または、平成22年に取得した土地を平成28年以降に譲渡した場合、譲渡所得の金額から1,000万円控除できる特例があります。
1,000万円特別控除とも呼ばれるこの特例の、要件は下記のとおりです(平成31年4月現在の法令である)
(1) 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること。
(2) 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。
(3) 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。
特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(4) 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。
(5) 譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例を受けないこと。
■引用:国税庁 No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
<所有期間の長さで税率が変わる>
譲渡所得は所得のうちであるため、所得税・住民税の対象なりますが、分離課税(=他の所得と合算しないで課税すること)に該当することがポイントです。
そして、その不動産の所有期間が、5年以下であるか、5年以上であるかで税率が変わります。
■短期譲渡所得(所有期間5年以内)
39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
■長期譲渡所得(所有期間5年以上)
20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税9%)
所有期間は、実際に不動産売却した年の1月1日現在からカウントされるため、所有期間が5年間であっても、月日によっては5年未満の短期譲渡所得となるケースもあるので覚えておきましょう。
日本の現状においては、キャピタルゲイン狙いは不向きであるといった説もありますが、ハイリスク・ハイリターンで大きな利益を狙いたい方は、プロに相談するのがおすすめです。
またキャピタルゲインでは、税率が高いので、トータルで考えると利益がまったく残らないというケースも十分あり得ます。
手堅く、安定した利益を得るのであればインカムゲインによる家賃収入がおすすめではありますが、空室リスクと運営コストからは逃れられず、一定のノウハウは必要となります。
このような状況を考えると、毎年の家賃収入でローンを相殺しながら利益を出し、最終的には最も高く売れる時期に売却することで大きな利益を狙う「インカムゲイン + キャピタルゲイン」という形の不動産投資もあります。