コロナ禍で非接触や開放感を理由に戸建て住宅が人気のようです。併せて資産性も意識した住宅購入を検討されるシーンも増えています。
そのような中で主要都市を中心に不動産案件が不足していますので、エリアで選べる中古戸建て住宅を選ばれる方が増えています。
その為、中古戸建て住宅を内見する際には、隣家との敷地の境目を示す「境界標(境界プレートや境界石など)」の確認は、戸建て住宅取引において重要なポイントです。
新築戸建て分譲は境界標がきちんと設置されているケースがほとんどですが、中古戸建ての取引では設置されていないケースが多いので注意が必要です。
それも築年数が経過した中古戸建て住宅の場合は見つける事が難しいケースも存在します。
そこで今回は、中古戸建てを購入する際にトラブルの原因の一つとなる境界について紹介します。
中古戸建て住宅の売買契約書に記載の「境界明示」も重要
一般的な中古戸建て住宅の不動産売買契約書には、売り主が買い主に対して境界明示をしなければならないと記載されています。境界明示とは、隣地所有者から、異議申し立てのない完全な所有権の範囲を買い主に示すことを意味します。売り主が勝手に思い込んでいる所有権の範囲を示せば良いわけではありません。
隣地所有者からの異議申し立てのない完全な所有権の範囲というのは、境界標で囲まれた範囲のことを言います。境界標は、資格のある土地家屋調査士などが測量を行い、その測量図に基づき隣地所有者の立ち会い・承諾を経て初めて設置されます。ですから、隣地所有者と合意した境界点であることを示す具体的な証拠となるわけです。その境界標のチェックまで気が回らない消費者も多いと思いますので、ぜひ把握しておいていただく事をお勧めします。
中古戸建て住宅の境界明示は将来のトラブル防止策につながる!
中古戸建て住宅の不動産売買契約書には、売り主が買い主に対して境界明示をしなければならないと記載されていますが、それが行われないケースや境界標がないのにざっくりとした場所の提示といったあいまいな境界明示で済ませてしまうケースも散見されます。しかし、このような取引をしてしまうと、後日、隣地所有者から境界に関して異議があった場合に必ずといって良いほどトラブルになります。ですから、売り主も買い主も、境界標をきちんと確認したうえで取引をするのが基本です。もし境界標がない場合には、売り主に境界標を設置してもらうのが一般的で、そのような義務を売り主に課した契約条項になっているかどうかは買い主にとってのチェックポイントです。
境界明示に代えて、売り主が買い主に測量図を引き渡すことで済ませる場合もあります。境界標がなくても測量図があれば問題ないと判断できる場合もあるのですが、これには注意が必要です。
測量図には確定測量図、現況測量図、地積測量図の3種類があります。
確定測量図とは、敷地を取り巻く全ての隣地所有者が境界線と境界点について合意した「境界確認書」がある測量図のことです。
境界確認書がある確定測量図があれば、境界標が仮になくなっていたとしても、隣地所有者と合意した証があるので、本来あるべき場所に境界標を設置し直すこと(境界標の復元)ができます。ただし、確定測量図がつくられた時期が古く、当時の隣地所有者が別の所有者に変わっている場合などは、境界標の復元が簡単にはできない場合もあるので、買い主は、売り主に境界標を設置しておいてもらった上で残代金を支払うほうが安全です。
確定測量図の費用は35万円~100万円程度、期間は場合によっては半年以上かかることもあるようです。
中古戸建て住宅の現況測量図と地積測量図には注意して下さい
現況測量図とは、現在の状況をもとに、塀やフェンスの外側や内側、中心など、土地の所有者が境界と考えている位置で測った測量図のことです。隣地所有者の意思とは関係なく、現況を土地の所有者の主観に基づき測量しただけのため、境界標を設置することができる測量図ではありません。
地積測量図とは、法務局に備え付けられている測量図のことです。土地の地積変更、地積更正登記、分筆登記などの申請をするときに法務局へ提出されるものです。2005年3月7日以降に作成された地積測量図は実質的に確定測量図と同等の効力があるといわれていますが、それ以前のものについては精度が必ずしも高くないものも含まれ、特に1977年9月3日以前の地積測量図は低い精度のものが多くあるとされていますので注意が必要です。
現況測量図や法務局に備え付けられた地積測量図については、土地家屋調査士などの専門家に相談し、その精度について確認したほうが良さそうです。
今後の参考にお役立て下さい。