金銭的な問題や精神面の気楽さなどで、学校を卒業しても実家で暮らす方が少なくありません。
実際に実家暮らしの方の人口はどんどん上昇しており、1980年には約39万人だったものが2015年には約301万人へと大幅増加。
日本国内で進む貧困化により親元を離れられない方もいますが、十分な収入があっても「食事を用意してくれる・洗濯してくれる」など自分で家事をしなくていい気楽さや居心地の良さから実家にべったりの若者が増えているのです。
そんな若者が結婚したらどうなるでしょうか?
親元から自立するという気持ちが薄いと「親と二世帯住宅に住みたい」と考えるのは自然なこと。
けれど配偶者からみれば義理の両親との付き合いはストレスになりかねません。
今回は、トラブルやストレスを回避する二世帯住宅の間取りについてまとめています。
<もっともストレスがたまらない完全分離型>
完全分離型の二世帯住宅は、例えば1階に親世代の住居をキッチンやトイレ、お風呂、洗面所などの水回りも含めて建築し、2階に住む子世代も同じく水回りを完全に分離しお互いの生活が干渉しないようにした間取りです。
上下階は内階段でつながってはいるものの、もっともプライバシーが保たれるタイプといえます。
ただ給排水音が響くため、できるだけ水回りは上下階重なるように設計すると音の問題も減少。
<ルールづくりが大切な部分共有型>
部分共有型はお風呂や洗面台、トイレ、キッチン、居間、玄関などの設備の一部(または全部)を共有するケースです。
一戸建ての自宅を二世帯でシェアしているような状態なので、この部分共有型は間取りに注意しなければなりません。
キッチンを共有するとしても、親か子どもの専有スペースにミニキッチンや小さめ
トイレも二世帯住宅となれば家族が多くなりますので、1ヶ所ではなく2ヶ所に増やしておくといいでしょう。
できれば将来介護をすることも考え、親世代の専有スペースにトイレを設置する間取りに変更しておくのがおすすめ。
そうすることで排泄物の処理やトイレ介助が楽になります。
<プライバシーや間取りに注意!完全同居型>
完全同居型はキッチンやトイレなどの水回りや玄関、居間を完全に親世代と子世代とで共有するタイプです。
親子世代がつねに顔を合わせることになり、プライバシーがなくもっともストレスがかかるタイプ。
キッチンやお風呂が増設できないなら、せめて親世代と子世代が入り込めない専有の場所(寝室など)を確保し、お互いに気兼ねなくリラックスできる空間を確保することが重要です。
1階の和室を親世代が、2階の部屋を子世代が使うなどプライベート空間は分離させておくことが必要ですね。
<完全分離型二世帯住宅のメリット>
親世帯と子世帯が完全に分離しており、それぞれのフロアにキッチンやトイレ、お風呂、洗面台、リビング、寝室、クローゼットなどがそなわっている二世帯住宅はプライバシーが保たれストレスを感じにくいのがメリットです。
ほかにもどのようなメリットがあるのでしょうか?
1・いざというときは賃貸運用や売却がしやすい
2・災害時や子育て、介護が必要なときに助け合える
3・税金の優遇措置がある
完全分離型の二世帯住宅は、親世代が住まなくなった後に空いたスペースを賃貸物件として貸しだすことができます。
キッチンやトイレ、お風呂が完全に分離しているので、賃貸物件として住人を募集できるのは大きなメリット。
同じ屋根の下に住んでいるため、お互いに大変なときは協力し合って生活できるのも魅力です。
また税金(相続税対策)についてですが、2014年1月1日に小規模宅地等の特例の法改正がおこなわれ、完全分離型の二世帯住宅についても減税の対象になりました。
完全分離型の二世帯住宅でも区分所有登記がされていなければ(つまり建物の登記は親世代の世帯主の場合)小規模宅地等の特例が適用され、相続税の節税が可能となっています
<完全分離型二世帯住宅のデメリット>
完全分離型二世帯住宅のデメリットは以下のような点になります。
1・建設費用が高い
2・コミュニケーションが取りにくい
3・相続時に揉める可能性がある
完全分離型二世帯住宅は、ひとつの建物にキッチンやトイレなどの水回りを2世帯分作らなければならず、敷地も広くとらなければなりません。
建築費や土地の取得も高額になるため、資金的にゆとりのある方でないと建築するのがむずかしいのがデメリットです。
完全分離になるとお互いに意識しないと顔を合わせる機会が減るため、定期的に声を掛けあうなど普段からコミュニケートしやすい雰囲気をつくっておく必要があります。
さらに親世代の資産が二世帯住宅のみになると遺産相続時に遺産分配で揉める可能性があります。
先を見越して遺産をどのようにわけるのか、事前に話しあっておく必要があるでしょう。
<ルールがないと生活が窮屈になる可能性大>
二世帯住宅でも部分共有や完全共有の家の場合、親世代と子世代が毎日顔を合わせるため知らず知らずのうちにお互いストレスや不満をためることがあります。
お互い気持ちよく生活するためにも、生活を始める前に約束を決めておくことが大切。
一番大事なのは家事や食事作りのような気がしますが、それ以上にお金の約束事が重要です。
同じ屋根の下で暮らす二世帯住宅では、毎月の水道光熱費や食費、自宅のローン、雑費などの負担や固定資産税の支払いなどをどのように負担するか決めておくことが大切。
「親が家のローンを払っているのに、一緒に住んでる子供は1円も出してくれない/食費を全部こっちが払っているのに、さらに親が公共料金や税金を押しつけてくる」など金銭的な部分でお互いの不満がたまると大変です。
「ローンの支払いや固定資産税、水道光熱費は折半」などお金にまつわるトラブルを回避することでトラブルを減らすことができます。
<家事の分担>
同じキッチンに2人の主婦が立つと揉めることも多いため、食事は誰がメインで作るか決めておくと揉めません。
朝は子世代が作り、夕方は親世代が作るなど家事の分担を決めておくと「私だけ重い家事負担をさせられている」という不満が出にくくなります。
また洗濯も「お姑さんに洗濯物を触られたくない」と考えるお嫁さんもいるはず。
洗濯機を2台購入し、親世代と子世代とで使い分けるのもひとつの手段です。
どうしても台所に立つと嫁姑が揉める…という場合はキッチンを増設する必要も。
親世代と子世代とで食事を別々に作れば、味付けやメニューに対する不満も減るはずです。
<共用部分の使い方>
設備を一部、または全部共用している場合もしっかりしたルールが必要になります。
お風呂が一つしかないのであれば、最初に誰がお風呂に入るのか決めておかないとズルズルと時間だけ経過しお風呂に使える時間が短くなってしまいます。
親世代から先にお風呂に入り最後は子世代など、ある程度の使い方を決めておかないと入浴時間がバッティングする、いつまでもお風呂に入れないなどのトラブルが。
トイレや洗面台も起きた人からどんどん使う、などのルールがないと渋滞を引き起こしてしまいます。
家族の人数が多くて設備が使えないときは、家を増築して設備を増やすなどの必要があるでしょう。
リビングを共用している場合、世代によって見たいテレビ番組が違うため「私の見たい番組が見れない」と不満がでることも。
サブのテレビを購入したり、ビデオに録画して後でみるなどの配慮が必要です。
二世帯住宅で親世代と子世代が一緒に住むには、やはりストレスを軽減させお互いのプライバシーをある程度守らなければなりません。
また生活するうえでのルールをつくり、そのルールを守ることも必要です。
いざとなればお互いに助け合える二世帯住宅ですが、ストレスがたまって喧嘩をしたりストレスが原因で病気になるようでは意味がありません。