台東区は、東京23区内で最も小さな面積といった特徴がある自治体です。
面積は小さいものの、区内には浅草や上野といった観光名所があり、国内外から観光客が集まる伝統文化や東京らしさが詰まった地域ともいえます。
観光資源が豊かで、下町情緒あふれる台東区では、2019年に都市計画マスタープランが策定されたことをきっかけに、今後さらに魅力ある街になるでしょう。
そこで今回は、台東区の都市計画マスタープランに基づいて、台東区の将来像と目指すまちづくりについて解説します!
台東区の都市計画マスタープランは、2019年から約20年後の台東区のまちづくりの将来イメージとして「世界に輝く魅力があるまち」を掲げています。
ここでは、区民の安全・安心な暮らしを基本にした、都市計画マスタープランの概要について見ていきましょう。
<都市計画マスタープランが策定された背景・目的>
自然災害や火事、第二次世界大戦の空襲などによる被災から復興し、現在のまちが形成されたのが台東区です。
特に関東大震災と帝都復興土地区画整理事業による基盤整備が、今の台東区の骨格を作り上げ、社会・経済の成長を成し遂げました。
昨今では、土地の利用状況や産業構造、国際化などの変化が進み、将来的な人口減少と高齢化、環境問題、多様な価値観と生活様式などへの対応が求められています。
これらの状況の変化や、時代のニーズに合った課題に対応し、まちづくりの将来像実現に向けた道筋を明確にするために、新たな都市計画マスタープランが策定されました。
<都市計画マスタープランの計画期間>
都市計画マスタープランは、概ね20年を計画期間としています。
そして、計画策定の平成31年(2019年)の10年後である、2029年を目途に計画の検証を行います。
この検証は、計画期間内に起こりうる社会や経済の状況変化に対応するためのものであり、時勢にあった計画であるかを見直すためのタイミングといえるでしょう。
その後、策定の20年後である2039年まで計画を遂行していき、台東区の将来像を目指していきます。
<都市計画マスタープランの役割・構成>
都市計画マスタープランの役割は、まちづくりの将来像を示すとともに、将来像の実現に向けた基本的な考えと方向性を示すものです。
同プランは、以下の6つの構成に分かれています。
第1章:台東区都市計画マスタープランとは
第2章:台東区の現況
第3章:台東区が目指すまちの姿
第4章:分野別まちづくり方針
第5章:地域別まちづくり方針
第6章:まちづくりの実現に向けて
これらは、都市計画マスタープランが策定された現況、将来像に対する具体的な取り組みをまとめたものであり、同プランの概要を台東区の歴史とともに確認できるでしょう。
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ここでは、台東区の現況と過去に行われたアンケートなどの結果を紹介します。
データの数字はよりよい台東区を目指すための材料となり、区民の意識や意見は、描く将来像に反映されていくことでしょう。
<人口の推移>
台東区の人口は、2040年代まで増加、それ以降は少子高齢化が進むと予測されています。
昼間の区内の人口は減少傾向で、台東区に住みながら別のエリアで働いている人が多いことがわかりました。
また、台東区に通学で訪れる人も減少していますが、観光・買い物で訪れる人は多く、経済が活性化しているといえるでしょう。
都市計画マスタープランでは、少子高齢化に向けた計画も含まれていますが、2040年以降の人口減少に歯止めをかけるための対策が重要になりそうです。
<台東区の動向>
観光地が多い台東区では、宿泊施設の数が年々上昇しており、国内外からの観光客が急増し、ホテルや旅館の需要が今まで以上に高まっています。
その一方で、製造業、小売業、卸売業の事業所数は減少傾向にありました。
台東区内の土地利用においては、商業用地が減少、住宅用地が増加しており、そのなかでもアパートやマンションが増えています。
区内の環境面では、上野恩賜公園、浅草寺、隅田公園ではまとまった緑化が進んでいるものの、市街地においては少なく今後の課題です。
禁煙では、二酸化炭素排出量は減少していることから、個人・企業単位で環境に配慮しているといえます。
このように、台東区の動向を見ると現況や、将来に向けての課題が具体的に浮き上がって見えるでしょう。
<台東区民のまちに対する意識>
台東区内に居住および区内への通勤・通学者を対象とした、台東区のまちづくりの方向性に関するアンケートを行っています。
このアンケートの「台東区のまちづくりは今後どのような方向に発展するのが望ましいか」の項目で、区内居住者・通勤通学者ともに、災害に強く犯罪が少ない安全・安心な都市と回答した人が最多となりました。
次いで、医療・福祉施設や教育施設、子育て環境が充実した都市と、歴史・文化・伝統を活かした観光が盛んな都市と回答した人が多くなっています。
そのまちに暮らすからこそ重要視したい、安全・安心、防災に対する意識は高く、台東区の大きな課題となるでしょう。
また、将来の人口減少に備えて、少子高齢化対策や、子どもを産み、育てやすい環境にするためにも、福祉面の充実も重要といえます。
台東区が目指すまちを実現するために、2つのまちづくり方針が策定されました。
それぞれのまちづくり方針と、その実現に向けての取り組みを紹介します。
<分野別まちづくり方針>
まず1つ目のまちづくり方針として、分野別まちづくり方針が策定され、以下6つの方針・目標を掲げています。
1.生活・住宅まちづくり方針
→空き家の適正な管理、生活の利便性向上、多様な人々の定住促進、地域のコミュニティの場づくりなど
2.文化・産業・観光まちづくり方針
→世界文化遺産や世界に誇れる歴史・文化の保全と活用した街作り、ものづくり産業の活性化など
3.花とみどり・環境まちづくり方針
→公園不足地域の整備、省エネ化、歴史・文化と調和したみどりの保全など
4.景観まちづくり方針
→祭りや地域行事の風情を活かした景観づくり、商店街のにぎわいの維持など
5.防災まちづくり方針
→老朽インフラの更新、平常時から防災活動拠点の整備の推進、燃え広がらないまちづくりなど
6.道路・交通まちづくり方針
→シェアサイクル、カーシェアリングの推進、安全で快適な歩行者空間の確保、道路の適切な維持・管理など
このように、暮らし、事業、環境、インフラなど、それぞれの目標に向かって計画が推進され、よりよい台東区を目指しています。
<地域別まちづくり方針>
2つ目の地域別まちづくり方針では、台東区を6つのエリアに区分し、エリアごとの目標・方針・将来像を掲げています。
1.上野地域
→上野駅周辺の拠点盛況か、地域の安全性向上、上野恩賜公園周辺の空間形成など
2. 谷中地域
→総合的な防災性の向上、歴史とみどりを活かした街作りなど
3.浅草・中部地域
→帰宅困難者対策、歴史・文化をもとに新たな賑わいの想像
4.根岸・入谷地域
→鶯谷駅の駅前空間整備(バリアフリー化)、近隣住民・来街者に対する生活利便性の向上など
5.北部地域
→地域内外の活力向上に欠かせない大規模区有地の活用、皮革産業を中心としたものづくりの活性化など
6,南部地域
→建物の安全性の向上、多様な人々に暮らしやすい空間形成、子育て環境の充実など
<まちづくりの実現に向けて>
台東区では、地域別・分野別のまちづくり方針を策定していますが、これらの実現に向けて、さまざまな意見を取り入れている最中です。
台東区民、台東区への通勤・通学者、事業者、地権者、行政、まちづくり組織など、台東区を形成するにかかせない人々と協働しながら、将来像へ向かって進んでいます。
特に歴史や文化を基調とするまちづくり方針が多く、今後の台東区の活性化にはかかせないポイントとなるでしょう。
都市計画マスタープランは、計画を運用しながら定期的に評価、見直しを繰り返し、さらに社会情勢の変化にも対応しているため、常に新しい未来へと向かっています。
まちづくりといえば、行政や地元の有志によるものといったイメージがあるかもしれませんが、台東区に関わるすべての人の意識が重要です。
今回紹介した都市計画マスタープラン、まちづくり方針を把握しておけば、現在行われている区内の整備や取り組みに対して、理解を深めることができそうですね。