海老屋染物工場は、明治24年創業の紺屋・染物屋です。
入谷駅から徒歩7分・鶯谷駅から徒歩9分ほど、台東区は根岸の柳通りに面して店舗と工場を構えており、主に半纏(はんてん)の染めを中心に行っています。
今回は、この海老屋染物工場についてご紹介していきます。
◆藍染めの歴史
藍染めの起源は紀元前にまで遡るとされていて、中国から朝鮮半島を経て、日本に伝えられたのは飛鳥時代から奈良時代であると言われています。
伝来した当初は、藍はたいへんな貴重品だったため、藍染めの衣服や布は、主に貴族社会の中でだけ楽しまれるものでした。
そこから時代が下って、大衆に広く藍染め製品が親しまれるようになったのは、安土桃山時代から江戸時代にかけてのことです。
特に、木綿の栽培が盛んになり一般に木綿糸が普及したことと、大工や左官といった職人たちが藍染めの印半纏や前掛けなどを作業時のユニフォームとして使いはじめたことから、藍染めは一般庶民の間に深く浸透することとなりました。
結果として、藍染めを行う紺屋もたくさん増え、藍染めの製品は江戸や明治時代の生活には欠かせない存在にまでになりました。
かつてはそれだけ広く用いられていた藍ですが、現在は本物の藍染めの製品を日常的に使用する人は限られてきており、都内に無数にあった紺屋・染物屋も、海老屋染物工場を含めて、数件を残すのみとなってしまっています。
◆古くからの文化を今に継承
海老屋染物工場では、そんな失われつつある江戸時代や明治時代当時の藍染め文化を今に伝えるべく、昔ながらの手法、昔ながらの作業環境にこだわって染物を作り上げています。
天然の藍が入った藍甕、地面は土という作業場や干場、長年使いこまれた道具が並ぶ風景は、藍や藍染めが生活に欠かせなかった時代そのままといった様相。
周辺の下町らしい街並みと相俟って、非常に趣のある店構えと工場の光景となっています。
現在は海老屋染物工場三代目となる店主が、長年掛けて培った技術で、手作業でしか生み出せない微妙な濃淡まで表現する、美しい藍染め製品を作り上げています。
◆藍染め製品の種類
かつては様々な小売店や火消しのユニフォームなどにも使用されていた藍染めの印半纏ですが、現在、海老屋染物工場では職人半纏や祭り半纏、寺社半纏、贈答用の手拭いなどの制作が中心となっています。
半纏や手ぬぐいはオーダーを受け付けていて、オリジナルデザインのアイテムや家紋・社紋などを入れたアイテムを制作してもらうことも可能。
半纏は、木綿製で1枚1万6000円からで10枚以上の注文に対応、また、手ぬぐいは1枚380円からで100本以上からの注文を受け付けています。
半纏、手ぬぐいの制作には、まず、染め抜くための「型」を作ることが必要となるため、上記の料金とは別に型制作の費用が掛かるので注意が必要です。
型制作の価格は、デザインや制作するものの大きさなどによっても異なりますが、手ぬぐいで3万円程度から。
少々高額ではありますが、一回「型」を作ってもらえば、繰り返し同じデザインの半纏・手ぬぐいを作ってもらうことが出来るようになっています。
【お店情報】
店名:海老屋染物工場
住所:台東区根岸4丁目6−3
アクセス:JR鶯谷駅南口改札から徒歩9分・東京メトロ日比谷線入谷駅4番出口から徒歩7分
TEL: 03-3873-1587